コラム
2025/10/29
ドローン×3Dスキャンで変わるCG制作|導入準備と活用の展望
映像制作の現場では、リアルで高精細な背景を短期間で作りたいというニーズが急速に高まっています。従来は数か月単位のモデリング作業が必要だった大規模なCG背景も、ドローンによる空撮や3Dスキャナーを活用することで、制作スピードと精度を両立できる可能性が見えてきました。
本記事では、ドローン×3Dスキャンの仕組みと活用メリット、従来手法との違い、そして森三平スタジオが準備を進めている取り組みについてご紹介します。
1. ドローン×3Dスキャンとは?
ドローン撮影(フォトグラメトリ)
ドローンに搭載したカメラで空撮を行い、数百〜数千枚の写真から立体モデルを生成する手法を「フォトグラメトリ」と呼びます。写真をもとに3D形状を再現するため、自然な質感や色味が得られるのが強みです。
3Dスキャナーによる点群データ
一方で3Dスキャナーはレーザーや赤外線を用い、建物や地形の表面を細かく計測します。これにより「誤差数ミリ」の精度で点群データを取得でき、構造物や地形を忠実に再現することが可能です。
両者を組み合わせる意義
フォトグラメトリは、質感・精度ともに優れた立体再現が可能ですが、上空からの撮影では建物の陰になる部分や見えない箇所のデータを取得できないという課題があります。
そこで、3Dスキャナーによるレーザー計測を組み合わせることで、フォトグラメトリでは補いきれない部分を正確に補完し、より完全な立体モデルを生成できます。
両者を組み合わせることで、従来の手作業では数か月かかっていた大規模背景も、数週間で制作できる可能性が広がります。
2. 従来のCG背景制作との違い
手作業モデリングの課題
これまでのCG背景制作は、モデラーが1つ1つ形状を組み上げ、テクスチャを貼り込み、細部を仕上げるという流れでした。大規模な景観をゼロから再現する場合、3か月以上かかることも少なくありません。
ドローン×3Dスキャンのメリット
- 制作期間の大幅短縮:数か月→数週間へ
- 高い再現性:実在の建築や自然をほぼそのままデータ化
- 効率化:モデリングの基礎部分を自動生成し、仕上げに注力できる
結果として、納期短縮と品質維持を両立できる可能性があります。
3. 活用シーンの広がり
文化財や歴史的建造物
立ち入り制限がある文化財や保存対象の建物は、実際にロケを行うのが難しいケースが多々あります。ドローンと3Dスキャンを活用すれば、文化財を傷つけずに高精度なCGセットを制作可能です。
遠隔地や広大な自然
雪原や山岳地帯など、移動や天候の制約が大きいロケ地も、スキャンデータを基にCG背景として再現できます。東京にいながら遠方ロケさながらの映像を制作できるのは大きなメリットです。
企業PRや展示会映像
実在のオフィスや工場をスキャンしてCG化すれば、展示会やオンライン発表会で臨場感のあるバーチャル映像を作ることができます。
4. 課題と今後の展望
機材コストと運用ノウハウ
ドローンや3Dスキャナーは高額であり、運用には専門的な知識が必要です。特に飛行申請や安全管理といった実務も避けて通れません。
データ処理と仕上げ作業
スキャンデータは容量が大きく、処理に高性能なPCやソフトウェアが求められます。また、最終的なクオリティは人の手による「レタッチ」に左右されるため、ノウハウを持つCGチームの存在は不可欠です。
短納期と高品質の両立
こうした課題をクリアできれば、大規模なCG背景を短納期かつ高品質で提供できる新しい制作フローが確立されます。今後の映像制作現場にとって大きな変革になると期待されています。
5. 森三平スタジオの取り組み
森三平スタジオでも現在、ドローンと3Dスキャナーの導入準備を進めています。
- 検証段階:試験的な空撮・スキャンを行い、データ取得からモデリングまでのフローを確認中
- 技術習熟:オペレーターやCGスタッフが新機材の扱いに慣れるためのトレーニングを実施
- 今後の展望:テレビや映画の現場だけでなく、企業PRや配信イベントなどにも応用を計画
実績としてはまだ準備段階ですが、これまでのCG制作ノウハウと組み合わせることで、従来にないスピード感と表現力を持つ映像制作を提供できるようになる見込みです。
まとめ:新しいワークフローの可能性
ドローンと3Dスキャンを組み合わせたCG背景制作は、まだ発展途上の技術ですが、映像制作現場に大きな革新をもたらす可能性を秘めています。
制作期間の短縮、リアルな再現性、そして従来では不可能だった撮影の実現。これらは制作会社やディレクターにとって、新しい演出の選択肢を広げてくれるでしょう。
森三平スタジオでも、こうした最新技術の導入を進めています。新たな撮影表現やワークフローにご関心のある方は、ぜひお気軽にご相談ください。